アメリカテキサス州の東オースティンで、3Dプリント製の戸建て住宅「East 17th Street Residences」が一般向けに販売開始しました。3Dプリンタを活用した住宅建設技術をもつICON社と、不動産開発業者3Strandsのコラボ企画で、販売数は4棟。価格は45万ドル(約4,900万円)~で、この地域では標準的な価格です。2021年夏までに入居可能予定。

目次
「East 17th Street Residences」の特徴
1階の壁面部分にICON社の3DプリンタVulcanを活用した建築技術(次項参照)を採用しています。上層部は従来の建築方式を採用。

設計はLogan Architecture社が担当。4戸ともに、庭と屋根付き駐車場がついています。また、オープンフロア設計、特注のインテリア、大きな窓、高性能HVAC、シンプルデザインが特徴。

3Dプリント製の家のメリット
一見すると、従来の家とかわりないように見えますが、3Dプリント製の家にはどんなメリットがあるのでしょうか。
頑丈で高耐久
3Dプリンタ製の建築資材は、従来の建築資材より頑強で耐久性があり、火事や洪水、強風といった災害にも耐えられる素材を使用。
ちなみに、ICON社独自のLavacreteは、セメントをベースにした3Dプリント用建築資材で、6,000psiの耐圧性で、既存の資材をはるかに上回るレベル。さらに熱効率も優れており、快適な室温を保ちます。

工期が短い
「East 17th Street Residences」の各家の完成までにかかる日数は5~7日だそうで、大幅に工期が短縮されます。組み立て作業や壁塗りといった、従来の方法では多くの人手が必要だった工程を、3Dプリンタでの作業で置き換えることで、作業員の人数も減らせます。ちなみに、2021年2月に米国で初めて3Dプリント製の家を販売したと称されるSQ4D社は、1900平方メートルの家を、作業員3人、2日間で完成したと報告しています。
価格はおさえめ
人件費に加えて、廃材等むだを省くことにより原材料費も抑えられるので、従来の家よりも手頃な価格で購入可能になります。各社とも、3Dプリンタ従来の建築費用より安くすることが主目的の1つなので、今後さらに低価格になることが期待できます。
Vulcanとは?
Vulcanとは、ICON社が開発した3Dプリンタで、1階建ての建築物を高速かつより低コストで完成させることができます。プリント可能な面積は2000平方フィート(=約185平方メートル)で、プリント幅の調整可能。
Vulcanはタブレットを使用して操作します。プロジェクトの開始から運営、メンテナンスに至るまで直感的でシンプルな操作で管理可能です。

ICON社の実績
3Dプリント製の家にはメリットが多々ありそうですが、実際の住み心地はどうなのか気になるところです。ICON社の3Dプリント技術使用の家には、すでに入居し生活している人々がいますが、続々とICON社へ新規プロジェクト依頼が舞い込んでいることから、その技術力はお墨付きと言えそうです。
2019年12月 メキシコ・タバスコで2棟完成
ホームレス支援の慈善団体「New Story」と共同で、低所得者向けに、500平方フィート(=約47平方メートル)の3Dプリント製ハウスを完成しました。
2020年3月 アメリカ・オースティンで6棟完成
ホームレス支援を目的としたアメリカの非営利団体「Mobile Loaves & Fishes」と共同で、Community First Villageの一画に建築しました。各家は400平方フィートの広さで、入居者応募時にはたくさんの申し込みがあったようです。

2020年10月 NASAとの共同開発パートナーに
NASAの「アルテミス計画」では月面での持続的な駐留・探査を目指していますが、そのためにはロケット以外の生活空間の建設が必要です。きわめて過酷な条件下において(熱や放射線、流星塵など)すぐれた防護性をもつ構造物建築の研究開発者としてICONがパートナーに選ばれました。
