MIT CSAIL(=マサチューセッツ工科大学 コンピュータ科学・人工知能研究所)の1グループが、センサー埋め込み型の繊維を発表しました。コロナ禍で、運動不足解消や体調管理などに関心が高まり、ウェアラブル端末の需要は高まっていますが、今回発表された繊維が実用化されれば、Tシャツや靴下等といった誰もが持っている衣料品で、動きや姿勢に関するデータを収集できるようになります。専用の端末を購入する必要がなくなりますね!
目次
現在のウェアラブル端末の弱点
これまでのウェアラブル端末の、センサーを搭載したインターフェイスは、性能・費用面においてかなり制限があります。例えば、より正確なデータを得るにはセンサー数を増やす必要がありますが、そうすると不具合の発生率が高まり、また、大量生産が難しいといった問題があります。
「触覚をもつ繊維」とは
上記のようなウェアラブル端末の制約を克服するため、センサーを搭載した繊維と通常の繊維を織り込んで作成した、いわば「触覚をもつ繊維」が、今回発表されました。これにより、着用者からの圧力を感知することができます(下図参照)。人間とその周囲のインタラクション(やり取り)を感知し、そのデータの記録、監視、学習が可能になります。

ちなみに、このセンサー搭載繊維は、柔らかく、伸縮性、通気性もあり、普段使用している衣料品と同等の着用感を得られそうです。

繊維にセンサーを組み込むメリット
繊維にセンサーを組み込むことで、以下のメリットがあります。
多くのセンサーを搭載できる
注目ポイントは、センサーにトラブルが発生した際に、自動的に矯正・補正できる、自己修正メカニズムが搭載されていること。機械学習技術を利用することで、各センサーの不具合に対応できるので、多くのセンサーを搭載できます。
デジタルマシン生産可能
安価なピエゾ抵抗ファイバーを使用し、デジタルニッティングマシン利用で自動作成できるので大量生産が可能。下図は、デジタルマシンで作業中の様子です。

着用して取得できるデータ
この繊維を使用した靴下、手袋、ベストといった試作品がすでに作成されていて、各製品で計測できるデータが異なります。靴下は、足跡の触覚データ変化と姿勢の変化の相関関係に基づき、ユーザーの動きを予測できます。ベストは、ユーザーの姿勢や活動の他、触れている面の質感についても検知できます。

今後の可能性
トレーニングやリハビリテ―ションの際に、今回の繊維を使った衣料品を着用することで、ユーザーの動きや姿勢について分析し、より的確に改善点を指摘できるようになります。
また高齢者が着用することで、転倒や意識障害等を検知できます。
開発チームメンバーの1人Wan Shou氏は、「私たち人間と同じ触覚のある『皮膚』をもつロボットを想像してください。」「この高精度の触覚機能をもつ衣類のわくわくするような新しい応用分野を、研究者は今後探求することになるでしょう。」と述べています。

出典:MIT NEWS
まとめ
メジャーリーグで始まった「データのオープン化」(技術やトレーニング方法に関するデータを一般に公開すること)が、その業界全体のレベルアップにつながるとして注目を集めています。今回発表された「触覚を持つ繊維」の衣料品が実用化され、より精密なデータを誰もが気軽に収集できるようになれば、「オープンシェア革命」がさらに加速しそうです。