オーストラリアの僻地にある羊や牛の牧場は、非常に広大かつ人の居住地から遠く離れた場所で営まれています。ちなみにオーストラリアで最も僻地にあるSuplejack Downsは、敷地面積4,000㎢で、最も近い都市Alice Springから車で13時間の距離があります。
僻地にいる家畜の監視頻度は非常に低く、ときには1年に1,2回しか監視されないこともあります。つまり誰も知らないまま病気になったり、その他のトラブルに遭っていることがしばしば。

via: photo AC
そこで、あるロボットが注目されています。Australian Centre for Field Robotics (ACFR) が2016年6月から2年間試験運用を実施するロボットで、家畜の群れを率い、家畜の健康状態や牧草量をチェックできるよう訓練されるそうです。
Robot ranchers monitor animals on giant Australian farms | https://www.newscientist.com/article/2089321-robot-ranchers-monitor-animals-on-giant-australian-farms/
農場用ロボットができること
今回試験運用されるロボットの名称はまだ決定していませんが、先行版の農場用ロボット「Shrimp」(画像↓)を高性能化したモデルになります。

先行モデルの「Shrimp」
温度および視覚センサーにより体温や歩き方の変化を検知し、病気やけがをした家畜を判別できるようになります。さらに牧草の質を判別するため、色、質感、形を観察できるセンサーも装備されます。
また試験メンバーのSalah Sukkariehさんは、「より健康的に飼育するため、家畜が自由に歩ける広い敷地を牧場主が簡単に維持できるようにしたい」と話しています。また、管理が楽であることを理由に利用されているフィードロット(肥育場)での飼育を減らすことも目指しているそうです。

「Shrimp」が牛の群れを追いやっている。
他にもSukkariehさんのチームが制作したロボットは数多く役に立っています。 そのうちの1つ、「Ladybird」は野菜の苗列の間を行ったり来たりして、雑草を取り除きます。
「Ladybird」は雑草を引っこ抜き、ピンポイントで除草剤スプレーをかけることで除草剤の利用を最小限に抑えることができます。
果樹園でりんごの数を数えるロボットも活躍しています。これにより農場主が収穫量の少ないエリアを把握し、受粉量を増加する等収穫量を増やすための的確な対策をとれるようになります。

りんごの果実が赤色で表示されている。
一般的にはロボットが人間の仕事を奪うのではないかと懸念されていますが、労働力不足に悩む農場経営者たちはむしろロボット技術の導入を切望しているそうです。